サウジに金融制裁が入ったなら、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)とソフトバンク・ビジョンファンド(SVF)の投資先はどうなるか?~ソフトバンク株、ただいま急落中
サウジアラビアの反体制派記者ジャマル・カショギ氏が在トルコ総領事館内で失踪した事件に関し、米上院外交委員会(Senate Committee on Foreign Relations)のほぼ全員(19人中18人)が徹底的な調査を要求する書簡に署名しています。
サウジ出身の反体制記者ジャマル・カショギ氏がサウジ領事館内で殺害された可能性
また同時に、これが事実であれば(というか、報道からするとほぼ事実と断定してますが)サウジアラビアへの武器売却や金融制裁措置をとるようにも要求しています。
A top US Senate Republican says he believes Saudi Arabia killed …
US spies say they have video and audio proof of Jamal Khashoggi’s …
このサウジアラビアへの武器売却ですが、トランプ大統領の就任最初の大手柄といってもいいものです。
トランプ大統領は就任初めの訪問国をサウジアラビアにしましたが、そこで1100億ドルもの武器売却契約をとりつけます。
「まさかサウジを就任後初の歴訪国に選ぶとは!」と当時は驚かれましたが、裏でかなりの根回しがあったのでしょう。
1100億ドルの武器取引などがポンと決まるはずがありません。
すべて、大統領就任前からいろいろ決まっていたクサい。
ロシアルートよりもユダヤルート、サウジルートの方がよっぽど重大な米国政治への介入をしていそうなものですが、そういったあたりは全く問題にならないあたりが、不思議で仕方ありません・・・きっと何かあったと思います。
その後も、サウジ、イスラエル、米国の蜜月ぶりは続きます。サウジとイスラエルの宿敵であるイランへの経済制裁を米国が導入。原油価格を引き上げてサウジアラムコ上場でガッポリ稼ぐ・・・というシナリオはかなり昔に出来上がっていたようにみえます。
米政権人事変更は対イラン制裁拡大への地ならしか? 3月17日
米国の通商・外交政策・・・エネルギーと覇権争い 3月26日
このサウジアラムコを使った錬金術の目論見はその後に潰えるのですが(上場無期限延期)、とりあえず、夏過ぎまでの状況は、これらイスラエル、アメリカ、サウジアラビアの運命共同体っぷりが見事に見える展開だったと思います。
ソフトバンク孫正義氏とトランプ大統領とサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子とパブリック・インベストメント・ファンドPIF
そして、トランプ大統領といえば、就任後すぐ会いにいったのはソフトバンクの孫正義氏。
孫正義氏は就任直後の2016年12月6日、米国への500億ドルの直接投資と、5万人の雇用を生み出すことをトランプ大統領に確約します。
ふつうの経営者がいきなり米国の大統領と会えるはずがありません。絶対に事前にいろいろなルートで繋がりがあったはず。
これと前後して、ソフトバンクは世界規模でテクノロジー分野に投資をするための「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」を立ち上げます。
これに、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が推進しているパブリック・インベストメント・ファンド( Public Investment Fund / PIF )がソフトバンクビジョンファンドSVFの主要な出資者として登場しました。
先ほども書いたとおり、トランプ大統領はその後、大統領就任最初の訪問国にサウジアラビアを選び、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子とも会談します。
個人的には、トランプ大統領の誕生をバックアップしていたのはロシアよりもサウジのマネーだったのではないか?とみています。
そして、孫正義氏をトランプ大統領に引き合わせたのもサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の力だったのではないか。
時系列的にみると、なにやらそんな感じがしてきます。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドSVFとサウジのパブリック・インベストメント・ファンドPIF
上でも書きましたが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの最大の出資元はサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(Public Investment Fund / PIF )です。
サウジは、自分のところの政府系ファンドで直接投資をすると制裁措置を受けかねない状況にあります。
911のテロ事件の被害者がサウジ政府を相手取って訴訟を起こす可能性があるため、といわれています。(被害者たちは、サウジ政府の基金がアルカーイダ系のテロ組織の活動に流れており、それによって被害を受けたと信じているようです。)
つまり、ソフトバンクビジョンファンドSVFとは、サウジのパブリックインベストメントファンドPIFの隠れ蓑みたいなもの・・・と自分はみています。
サウジに金融制裁措置が入ったら、ソフトバンク・ビジョン・ファンドSVFとパブリック・インベストメント・ファンドPIFはどうなるか?
一番最初にも書きましたが、いまアメリカの上院外交委員会は、記者殺害事件へのサウジ関与を強く疑っており、トランプ大統領に強硬な態度を要求しています。具体的には軍事兵器の禁輸、金融制裁措置などです。
もしこれが導入されたら、ソフトバンク・ビジョン・ファンドSVFやパブリック・インベストメント・ファンドPIFはどうなるでしょうか?
ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先には赤字企業が多い?
いや、ぶっちゃけソフトバンク・ビジョン・ファンドSVFの投資先企業の個別決算はよくわかりません。未上場企業だらけですのでそれはしかたない。
ただ、ひとついえるのは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドSVFは大型テクノロジー系ユニコーン企業への投資が中心であり、キャッシュをコツコツ稼ぐ企業よりも、拡大への投資をひたすら続ける企業が多い。
とりあえず、投資先を載せておきます。ちょっと見てください。これらが黒字企業にみえますか?
- Didi Dache(滴滴打車)
- SoFi
- オヨ・ルームズ
- ワンウェブ
- ARMホールディングス
- ガーダントヘルス
- インプロバブル・ワールズ
- ペイティーエム
- NVIDIA
- OSIソフト
- ナウト
- ブレインコーポレーション
- プレンティ
- フリップカート
- ロイバントサイエンシズ
- ウィーワーク
- ファナティクス
- スラック
- ZhongAn Online P & C Insurance
(衆安在線財産保険) - Mapbox
- Vir Biotechnology
- コンパス
- アウトアインスグループ
- カテラ
- 平安健康医療科技
- Wag
- ドアダッシュ
- Manbang / Full Truck Alliance Group
(満幇集団) - GMクルーズ
- Science 37
- Cohesity
- Etechaces Marketing and Consulting
- ライト
以上Wikipediaより要約
きちんと中身を見てみないと本当のところはわかりませんが、感覚的にこれらテクノロジー系スタートアップは赤字企業だろうと思います。
スタートアップというのはとかく資金を必要とし続ける企業であり、勢いを失わないために常に資金を流してやる必要があります。
そのための投資ラウンドであり、そのさいに未実現利益をかさ上げし続けてきたのが、時価会計基準とIFRS(もしくは米国会計基準)による会計上のトリックだったのではないか?と自分は見ています。
時価会計と投資ラウンド(シリーズシード、シリーズA、シリーズB、シリーズC…)を使った未公開株錬金術
ここもと時価会計を利用したスタートアップ企業のキャッチボールが盛んです。
自分が投資している対象が赤字企業であっても、どこかの会社が当該会社に新規投資をした時の出資単価が高ければ時価が上昇したとみなして未実現利益を計上する・・・そうやってキラキラな業績に見せる手法が広まっていました。
ようするに、美大出のよくわからん学生の絵でも、転売されるごとに価格が上昇するみたいなもんです。
相場があってないような、そんなものとしてスタートアップ企業の未公開株式がキャッチボールされてきました。
現実には、まったくすべてをキャッチボールするのではなく、投資ラウンドごとに投資元が新規出資者を募って、高く設定した株価で新規出資する・・・みたいなやりかたです。これで時価を高くみせるようなやり方をしてきたファンドが多い。
これが今回のユニコーンバブルの実態。
ソフトバンクがそうであったとは断言しません。ここら辺の高い、安いの感覚は人それぞれですから。
とりあえず言えることは、主観的評価でしかない未上場株の株価が、客観的評価軸を得た(と錯覚された)時におきる悲劇が、いま積み上がっているのではないか、と自分は感じるわけです。
これはあくまでも自分の主観であって、絶対的に自分の論が正しいとは言い切れません。あくまでもおいらの意見、としてみてください。正しいか否かは、読者の方が判断してください。
スタートアップバブル・ユニコーンバブルの崩壊に注意~アリババ、ソフトバンクからみえること~
ソフトバンク・ビジョン・ファンドSVFから投資先に資金を流せなくなったらどうなるか?
ソフトバンク・ビジョン・ファンドSVFの投資先は育ち盛りの子供たちみたいなものです。
つねに栄養源を欲しています。
いっぱい栄養を与えてやれば大きく立派に育つかもしれませんが、育つごとに必要となる栄養の量はふえていきます。
それがスタートアップというものです。
そして、栄養を適切に供給し続けられなければ、みんなが揃ってお陀仏になります。
育ち盛りの子供たち(スタートアップ)のための栄養(マネー)をじゃぶじゃぶ出してきたのが、原油価格上昇で潤ってきたサウジのパブリック・インベストメント・ファンドPIFであり、「サウジアラムコ上場の暁にはより大量の資金が流れ込む」(きっともっと栄養タップリで育つはず)との願望から買われてきたのが、これら大型スタートアップ(ユニコーンたち)だったのではないかと、自分はみています。
つまり、資金が尽きたら(栄養が足りなくなったら)、これらユニコーンたちは育たなくなるばかりか、資金繰り悪化で死んでしまう可能性もあります。それがスタートアップの世界です。
既にIPO市場は崩れている。ソフトバンク・ビジョン・ファンドはEXIT(イグジット)がみえない状況なのでは・・・
親が一生懸命働いて栄養を与えて育ててきた子供、いっぱい勉強させるために塾にも行かせて、高い学費の私立学校にも通わせて育ててきた子供たち・・・
そんなふうに頑張って育てても、子供の巣立ちの時期によっては、花形企業にすっきり就職できる場合もあれば、就職氷河期のようになかなか巣立ちできない場合もあります。
就職せず、研究したいわけでもないのに院にいって親の脛を齧って、あげくポスドク・・・みたいな人たちが続出したのが就職氷河期です。
今のスタートアップ市場は、これと似た環境に変化しつつあります。
すでにIPOバブルは崩れています。
スタートアップバブル・ユニコーンバブルの崩壊に注意~アリババ、ソフトバンクからみえること~
直近上場の多くの銘柄が、上場時の株価を下回っています。
市場環境がよくないからと、上場を先延ばしする動きも出てきています(テンセントミュージックなど)。
どうやら、親の脛を齧るスタートアップが続出してきそうな状況になってきています。
子供が親にカネを送ってくれなければ、親も倒れてしまう可能性があります。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドSVFとレバレッジド・ローン(バンクローン)
そして問題はここからですが、実は子供を育てるために、親が身の丈を越えた借金を大量にしてきている可能性がある・・・そこが問題です。
80年代、90年代に子供を育てた親御さんなら何となくわかるはず。
子供を受験競争で勝ち残らせるため、たくさんの無理を親はしました。そのなかには、教育費を大量に用意するために借金をした親もいるといいます。(そうした傾向は最近、バブル崩壊ぎみの中国でも起きているようです)
今のソフトバンクは、営業キャッシュフローを上回る資金を投資しています。それも長年。
そのカネの出どころはソフトバンク・ビジョン・ファンドへ投資してくれているサウジ系パブリック・インベストメント・ファンドPIFからのものもありますが、ソフトバンクが銀行から借りている資金もあります。
もし仮に、パブリック・インベストメント・ファンドPIFが資金を送ってくれなくなったらどうなるでしょうか。
子供たち(ユニコーン)を育てるために、より一層借金を膨らませるでしょうか?
いや、しかしそれはなかなかに難しいかもしれません。
もしかしたら、子供を売り払う必要があるかもしれません。
ようするに今起きていることは、
女手ひとつで養子を育ててきた母子家庭のお母さんが、たくさんお金をよこしてくれるパパさん(しかも山持ち、都会のデベに山の一部を売却予定)をみつけて舞い上がって、さらに借金を増やしながら養子も増やしたのだけど、なんだかそのパパさんが警察に追われておカネ送ってくれなくなりそうでヤバくね?しかも金利も上がってきてるし、反社と取引できないって都会のデベにそっぽ向かれてるっぽい・・・
みたいな感じでしょうか。
ちょっと語弊があるかもだけど、そんな感じで上手くまとまるような気がしてます。
ソフトバンクの株価急落中~でもチャート的にはまだまだ強い?
ソフトバンク株は本日7.27%急落しています。
でも、チャートパターン的にはぜんぜん屁の屁の河童
なんてことのないサゲにもみえます。
この程度の急落はソフトバンク株にはよくあることで、驚くほどのことでもないように思います。暴落とはいえないかもしれません。
とりあえず、大した急落でないとはいえ、世界全体を見渡してみるといろいろと辛い状況になりつつあるように感じます。
金利の上昇も、サウジアラムコの上場延期もじみに効いてきそうな感じがします。
ソフトバンク株の唯一の救いは、チャートパターンが売りを示していないことだけ。そんな感じが自分はしています。
とりあえず、上記はあくまでも個人的見解です。書かれている内容には間違いもあるかもしれません。そこら辺を割り引いて読んでください。べつにソフトバンク株を売れとか言っているわけではありませんのであしからず・・・。
長文失礼しました。以上です。