李克強総理とメルケル首相が中国ドイツ政府間協議を開催し、シーメンスやBMW、BASFなどが200億ユーロ規模の商談を成立させました。
中独政府間協議がドイツで行われています。
政府間における大まかな協議内容、結果については以下の記事に詳しく書かれています。
さて、今回の第五回中独政府間協議ですが、今までよりもさらに一歩踏み込んだ経済協力関係の深化が図られました。
具体的には
- シーメンスがアリババ・クラウドと提携し、IoT基盤「マインドスフィア」を中国国内で発売。
- BMWが提携先ブリリアンスチャイナ(華晨中国汽車控股)と共同でBMWブリリアンス・オートモーティブズ(BBA)の生産能力を年産52万台に拡大。BMWにとって世界最大規模の工場となり、同社初のフルEVであるBMWiX3を2020年から生産開始。
- 化学大手BASFが100億ドル(約1兆1000億円)をかけて中国広州に100%出資の石化コンビナートを建設。
Siemens inks deal with Alibaba for China loT partnership
BMW, Brilliance JV to expand capacity to 520000 vehicles in 2019
Germany’s BASF to Build $10 Billion Guangdong Chemical Plant
また、今回の会談のなかでは具体的な行動に至っていないものもありますが、以下の点における認識で一致しています。
- インダストリー4.0での協力
- 人工知能、新エネルギー車(EV/FCV)、自動運転などで協力
- 中国側はドイツ企業による対中投資を歓迎(BASFによる100%出資コンビナートはまさにこの例)
- 第三国市場の共同開拓を検討
- フランクフルト金融センターと人民元オフショア市場の建設を支持
- 中国が非金融企業債務融資ツール引受業者資格をドイツ銀行へ授与
- 環境対策、省エネ・環境保護で協力
- 自由貿易を推進
解説します。
1.インダストリー4.0はドイツにおける製造業のデジタル化、もっと小さく定義するなら「IoTやAIを利用した製造業革命」といったところです。人間とロボットが共同して作業したり、ビッグデータやクラウドコンピューティングによる需要分析、在庫管理の徹底、3Dプリンティングなどを利用した消費者向けカスタマイズ製品の提供、、、などが柱になっています。が、とりあえずここら辺の話は長くなるのでおいといて、この中心になる企業がKUKAです。そしてそれを買収したのが、以前紹介した中国の美的集団(Midea/マイディア)です。東芝の家電部門を買収した企業でもあります。
2.人工知能、自動運転などですが、基本的に人工知能は現在、中国とアメリカが抜きん出いているといわれています。そして、とくに自動運転分野においては、中国は実際の道路でのテストがしやすいとのことで、中国での開発スピードが世界の中でトップレベルにあるとのことのようです。中心となる企業は検索大手百度(バイドゥ/Bidu)と言われています。というのも、同社は中国の地図を持っていて、Googleマップのような機能を中国で提供しているのだそうです。
3.中国は海外からの直接投資が減ってきています。技術をもう一段深化させるため、ドイツの資本と技術を導入しようと考えているようです。今回のシーメンス、BMW、BASFの投資をあわせると200億ドル超らしいです。
4.これがよくわかりません。鉱山開発などで協力する気?
5.すでにフランクフルト証取との相互接続は行われているのですが、これを深化させるとのことです。まずは人民元オフショア、その後債券、株式などにも広げていくものと思われます。
6.これは詳しくないのでよくわかりません。ドイツ銀には、先日トップ幹部の一人が転落死した海航集団(HNA)が出資しています。
7.すでに一部企業は提携しています。たとえば風力設備大手シーメンスガメサは新天緑色能源(チャイナサンティエン)と提携しています。
Siemens Gamesa extends Chinese licensing agreement
8.これは完全にアメリカに対するあてつけです。
以上のように、全体的に中独の経済面での連携が表に出てきた会合だったと思います。
アメリカは、中国経済を世界経済のシステムから排除し、分離し、小さくすることで自国の覇権を維持しようと考えているようにみえます。
その取り組みを実現するためには日本と欧州を米国の味方につけねばならないのですが(※1)、どうも欧州の盟主ドイツは、アメリカ側の思うようには動くつもりがないようにみえます。
中独の連携した行動をみるかぎり、ドイツは「あわよくば、漁夫の利を狙ってやれ」とすら思っていそうにみえます。
※1 たとえば半導体製造装置をみてみましょう。世界最大の企業はアプライドマテリアルですが、世界最先端はASMLです。そして日本にも東京エレクトロンなどがあります。
アメリカは対中国経済制裁の一環として、自国の半導体製造装置の輸出を禁じる方向で検討しているそうですが、これで日本企業が潤うと思ったら大間違いです。アメリカ政府が日本にも販売停止を要求してくる可能性は十分にあります。
対共産圏輸出調整委員会COCOM(ココム)みたいなものです。
しかし欧州は・・・アメリカの言うとおり制裁をやらない可能性がありますね。対イランの足並みの乱れをみてもわかります。トランプには従わない、という意識があります。
上手く立ち回っています。
さて、日本はこの環境下でどういった方向に向かっているのでしょう・・・たぶん安保の問題があるかぎり、対米追従せざるをえないでしょう。その結果として、日本は非常に損な役回りを担わされる可能性があると思います。そのことには、覚悟しておいた方が良いと思います。