中国のO2O不動産仲介会社、鏈家(Lianjia.com)にテンセントが出資~不動産賃貸にも個人信用スコアの時代到来か?
中国のO2O(online to offline)不動産仲介大手、鏈家(Lianjia.com)にテンセント(騰訊/Tencent)とウォーバーグ・ピンカスなどが出資すると伝わっています。
Tencent investing $1b in Chinese real estate brokerage Lianjia: Report
鏈家(Lianjia.com)に対するテンセントの出資ですが、10億ドルというそこそこ大きな金額となっています。
鏈家(Lianjia.com)は中国の28の都市で8000以上の店舗型不動産業を運営。
もともとHome Linkと名乗っていた鏈家ですが2010年代半ばころにオンライン不動産業に乗り出したころからLianjiaと名前を変更。
鏈家(Lianjia)は店舗型不動産業を続けるいっぽうで、O2O(Offline to Online)不動産仲介業のLianjia.comなども運営しています。
このLianjia.comも含めた中国の不動産仲介業シェアでみると、Lianjiaは7%を占めているとのことです(2016年調査)。
なお、この鏈家(Lianjia)には万科企業(Vanke)もすでに出資しています。
Vanke to invest $440m in Chinese online real estate agency Lianjia
さて、鏈家(Lianjia)による万科企業との資本提携が不動産ビジネス上での繋がり強化だとするなら、今回のテンセントとの提携はどんな意味をもつでしょうか?
個人的にそれは、テンセントが計画している信用格付け制度の利用ではないかと思います。
自分の知っている人で中国に住んだ人はみな口々に「とにかく不動産を借りるときに常識が通じない」と言います。
転貸物件を掴んでしまうリスクが高く、大家が本当の大家なのか信用できない、だとか
不動産屋が見せ餌のような物件ばかりをネット上にアップしていて、実際に足を運んでみたら借りられたあとだったとか、
逆に自分が住んでいる物件がずっと貸し出し物件に載っていて気持ち悪いだとか、
大家が公安局に行きたがらないだとか(なぜ?)
いろいろとトラブルを抱えた人が多いんです。
こういった困った大家、または逆に困った借り手などをしっかり排除するために、テンセントの計画している個人信用スコアシステム(アリババの芝麻信用みたいな)は使えると思います。
マナーをちゃんと守っている人は借りられるけど、そうでない人は借りられない・・・とかそういう社会になるんじゃないか、という感じがします。
これはあくまでも個人的な想像なので、実際にそうなるかはわかいませんが、その可能性を考えての出資じゃないかなぁと・・・もしそうであるなら、シナジーは発揮できるでしょう。
ちなみに、中国政府は昨年暮れあたりからデレバレッジ(民間債務比率の低減)を進めるにあたって、不動産市場に関して重大な方針をしめしています。
不動産マーケットを開発→販売のループで成長させるのではなく、賃貸市場を育成していくことが必要だとの方針です。
中国の住宅賃貸市場は発展好機を迎える~2030年に4.2兆元規模へ MUFG
今後、中国ではますます賃貸市場が盛り上がると思います。
日本でもバブル当時は「賃貸より持ち家」な思考の人が多かったんですが、地価上昇が止まり、下落に至る中で住宅ローン破綻する人々が相次ぐ状態になり、賃貸でもいい、賃貸の方がむしろ良い、と考える人たちが増えてきました。
中国でもそういう状態になる可能性があります。
今回のテンセント(騰訊/Tencent)による鏈家(Lianjia)への出資は、そういった賃貸市場の今後の発展を捉えるための投資だったと思います。
とりあえず、相変わらずテンセントは良いところに目がつくなぁと思います。
ゲーム産業が政府の締め付けでくるしいなか、どうにかして次のメシの種を探そうとしています。
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彼らは社会の動きをゲームのように捉えているのだと思います。非常に頭がいい。
テンセントのバリュエーションは高く、株価は下落傾向ですが、こういった種蒔きはかならず長い目で同社の業績に貢献してくれると思います。
以上です。
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