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世界4位のユニコーン美団点評(Meituan-Dianping)が香港市場にIPO

2018年6月23日付のニュースまとめ記事でも書きましたが、

世界4位のユニコーン・美団点評が香港市場にIPO(新規株式公開)するそうです。

 

美団点評が香港に上場申請  シャオミに続く大型上場 :日本経済新聞

 

とりあえず、美団点評(メイチュアン・ディアンピン)についてご存じないかたのために、軽く企業紹介をしたいと思います。

 


世界四位のユニコーン・美団点評 時価総額は300億ドル(約3兆3000億円)

 

美団点評(メイチュアン・ディアンピン / Meituan-Dianping / China Internet Plus Holdings )は日本ではあまり耳にしない企業名ですが、世界的な新興企業のひとつで、時価総額は300億ドル(約3兆3000億円)に達する、いわゆるユニコーン(時価総額10億ドル以上の未上場企業)のうちのひとつです。ユニコーンランキングでは、1位ライドシェア大手Uber、2位中国版ライドシェア大手Didi Chuxing(滴滴出行/ディディ) 、3位中国版格安スマホ Xiaomi(小米/シャオミ) に次いで四位にランクインしています。ブルームバーグ調べ

2010年に王興氏が北京で創業した美団点評の事業内容は、創業当初時から目まぐるしく変化しています。もともとはアメリカのグルーポンのような共同購入サイトから始まった美団ですが、15年に中国版食べログ(飲食店口コミサイト)の大衆点評と合併し美団点評となり、レストランの予約や検索に進出。ネットを利用した出前、デリバリーサービスにも手を広げ、今では旅行サイトや配車サービス、映画チケット手配などにも進出、直近ではシェア自転車サービスのMobike(モバイク/摩拝単車)に出資して傘下におさめるなど、美団点評は中国のネットビジネス界で積極的なM&Aを繰り返して生活関連サイトの中心的な企業に発展してきました。

なお、美団点評には中国ネット界の巨人テンセント(騰訊/Tencent)が出資しています。テンセントは同社の将来性を高く買っているようで支配下に置こうとした過去もあるようなのですが、美団点評はその後テンセントからMobikeの持ち分を買収するなど規模を拡大し、どうやら半提携で独立独歩でやっていくことを選択しているようにみえます。ここらへんは流動的なのでよくわからない部分もあるのですが、最近は新規の提携の話がなくなっていることがやや気がかりではあります。


(以下、脱線記事なので読まなくても大丈夫です)

中国のネット業界では今、新小売という考えが普及しているそうです。これはアリババ集団のジャック・マーCEOが提唱したものなのですが、要するにネット上とリアル店舗との融合を図り、両方のチャネルで同一のものを扱うことで大量に売れるようにしよう・・・という考えです。日本で実践している企業というと、ヨドバシドットコムがイメージしやすいと思います。

アリババのライバルであるテンセントも御多分にもれず、食品スーパーマーケットや小売関連事業など生活産業分野を充実させようとしています。そのために以前は美団点評との提携を巡るニュースがよく出ていました。ですが、ここ一年以上、そういった美団点評との関係強化を報じるニュース記事がほとんど出てこなくなってきています。

実際、テンセントが買収、出資しているスーパーマーケットもデリバリーなどを行っており、美団点評と一部事業においてバッティング/競合が発生してしまっています。美団点評の上場後にどういう道筋をたどるのかはわかりませんが・・・最悪、両社は戦いあう展開になることも考えられます。


 

とりあえず、そんな美団点評ですが、上場で調達する資金は60億ドル(6600億円)規模を想定しているとのことです。時価総額は300億ドル(約3兆3000億円)ですが、調達資金は無人宅配サービス開発などの費用に充てるということです。

 

さて、個人的にはこの美団点評の香港市場へのIPO(新規株式公開)のニュースにはひとつ引っ掛かります。それは以下の点です。

 

美団点評はなぜIPO(新規株式公開)する市場を香港市場に選んだのか?中国政府は中国本土株市場活性化のために上海A株および深圳A株市場へのハイテク・ネット企業の上場をさせていくのではなかったのか?

美団点評は中国預託証券CDRを用いた中国本土株市場上場はしないのか??

 

これ、めっちゃひっかかります。シャオミ(小米/Xiaomi)も直前まで中国本土A株市場にCDR(中国版ADR/中国預託証券)するといわれていました。

しかし、しなかった。しなかったというより、できなかったのだと思いますが。

中国本土株市場は、直近で非常にマズいチャートになってきています。

 

上記は上海総合指数です。上値を切り下げながら下落しており、2016年初めころの安値を窺う展開になっています。

ようするに、需給要因的に美団点評や小米などの数千億規模の大型上場を受け止められるだけの資金の出し手がいなくなっている。中国政府はシャドーバンキング潰しに積極的で資金供給を絞っているため、株式市場にそれだけの余裕がない状態・・・しかも米中通商摩擦でリスクマネーの供給に影響が出ている・・・

 

のだと思います。

中国政府としても美団点評や小米は中国本土で上場させたいところでしょう。これら企業の成長を国民の経済力向上に繋げていくことは、昨年の中央経済工作会議でも方針として示されていました。しかし、現実的にはそれは難しい。リスクマネーの出し手は、結局リスクマネーを出せるだけの余裕のある者たちだけなのです。中国の人民には、まだまだそれだけの余裕がない・・・

そのことを明確にしたのが、今回の美団点評と小米のIPO計画だったように思います。


 

とりあえず、MSCI新興国株指数採用もされたことですし、中国本土A株市場には今後も資金は流れ込むでしょう。しかしまだ超大型の資金提供を行うだけの余裕がある市場ではない。

たぶん、今回のごたごたで一番安心しているのは、香港の人たちじゃないかと思います。金融センターとしての香港の立場はしばらく安泰・・・そういうことなんだと思います。