【サウジ】反政府記者殺害に絡み、情報機関NO.2アフメド・アシリ少将、サウド・カハタニ王室顧問を解雇~情報機関立て直しのためムハンマド皇太子による委員会を設置へ
ムハンマド皇太子を公然と批判してきた反体制派記者がイスタンブール総領事館で殺害された事件の続報。
サウジ政府はこの反政府ジャーナリスト殺害事件に関し、ムハンマド皇太子を頂点とする調査委員会を設置。
あわせて、情報機関NO.2であるアフメド・アシリ少将と、サウド・カハタニ王室顧問に責任を負わせる方針であることを表明。
つまりまとめると
記者殺害についてムハンマド皇太子は何も知らなかった。情報機関の連中(アフメド・アシリ(Ahmad al-Assiri)総合情報庁副長官、サウード・カハタニ(Saud al-Qahtani)王室顧問)が暴走してやったこと。
という説明になろうかと思います。
サウジが不明記者の死亡認める 高官2人解任 米大統領「信用できる」 ロイター
アフメド・アシリ少将、サウド・カハタニ王室顧問の二人が今回の事件に関与していたのは確かでしょうが、果たしてその二人だけの責任なのか。それともさらなる上層部に指示をした人物がいるのかいないのか。
サウジ政府としてはアフメド・アシリ少将、サウド・カハタニ王室顧問の二人を切ることで「トカゲの尻尾切り」をしたいのでしょうが、果たしてこれに誰が納得するか?という問題。
トランプ政権、いよいよムハンマド皇太子を切り捨てか~ムニューチン財務長官、砂漠のダボス会議出席せず~
とりあえずサウジ王家としては、ムハンマド皇太子の失脚だけは避けたい模様です。
殺人実行犯はムハンマド皇太子の身辺警備隊が多数
なお、今回の記者殺害事件ですが、ジャマル・カショギ記者は9月に一度、前妻との離婚証明書をとりに在イスタンブール・サウジ総領事館を訪問していたとのことです。
そのときには書類を渡されず、10月2日にもう一度サウジ総領事館に来るようにいわれたカショギ記者は、言われるままに10月2日に再度訪問。
トルコ側が握っているとされる録音記録からすると、訪問直後に薬物によって気を失わされたのち、生きたまま殺された可能性が示唆されています。
サウジ出身の反体制記者ジャマル・カショギ氏がサウジ領事館内で殺害された可能性
ちなみに、10月2日朝には、トルコの空港に2機の小型ジェット機ガルフストリームが到着。
この2機には15人のサウジ関係者が乗っていたとのことですが、このうちの12人がムハンマド皇太子の身辺警護などをしていた情報機関員や軍人だったとのこと。(なので、監督する立場にあったアフメド・アシリ少将、サウド・カハタニ王室顧問が責任を問われるというこのとようです。)
さらに、高名な解剖医学の研究者も搭乗していたとのことで、これら15人が今回の事件の実行犯といわれています。
ムハンマド皇太子の使用者責任
つまり、これが本当であれば、そもそも最初からカショギ氏を殺すことが目的であった可能性が濃厚であり、しかもムハンマド皇太子が直接指示を出していた可能性が極めて濃いということになります。
ようするに、ヤクザの親分やマフィアのボスが
「殺れ」
といって、子分が殺人を実行した・・・そういうのとなんら変わりありません。
もっというと麻原彰晃が
「ポア」
といって、信者が殺人を実行したのと同じです。
今回の件、どう考えても使用者責任が問われるはずですが、サウジとしてはムハンマド皇太子に傷をつけることだけは避けたい模様。
アフメド・アシリ少将、サウド・カハタニ王室顧問の二人を切り捨てることで事件の終息を図りたい構えです。
ムハンマド皇太子を守るために原油価格を盾にするサウジ
なにがなんでもムハンマド皇太子を守るために、「制裁を科すなら原油価格は150ドル、200ドルになるだろう」などというコラムを書いて、西側諸国を恫喝しはじめています。
サウジアラビアが石油輸出禁止措置を検討か~記者殺害事件めぐる制裁措置を牽制
必死だな・・・という感じがします。
どう考えても分が悪い。
ムハンマド皇太子とソフトバンク
なお、今回の件は金融市場も揺さぶっています。
とくにサウジは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドへの大口出資者であることから、ムハンマド皇太子への非難が広がればソフトバンクへの新たな資金供給が途絶えるのではないかという恐れから同社株が売られています。
サウジへの金融制裁の可能性でソフトバンクの株価が暴落中~PIFとSVFへの波及が焦点
ムハンマド皇太子と砂漠のダボス会議
また、ムハンマド皇太子が10月23~25日の日程でリヤドで開く未来投資イニシアチブ(別名:砂漠のダボス会議)ですが、これへの出席を取りやめる関係者が続出しています。
ムニューチン米財務長官すら出席をやめるといいます。カショギ氏殺害事件を巡るムハンマド皇太子への包囲網は着々とつくられつつあります。
はたして、この環境下でアフメド・アシリ少将、サウド・カハタニ王室顧問の二人を切るだけでどうにかなる問題なのか、はなはだ疑問です。
リンゼー・グラム上院議員「ムハンマド皇太子はサウジを堕落させた」
記者殺害疑惑、近く真相解明 トランプ氏 日経新聞
トランプ大統領に近しいリンゼー・グラム上院議員は、サウジとの関係を維持するにしても、ムハンマド皇太子を排除してからだ。。。といった感じの主張を展開しています。
ムハンマド皇太子がトップにいるかぎり、武器は絶対に輸出してはならないとも言っています。
トランプ大統領がいくらムハンマド皇太子を庇おうとしても、周辺のほとんどの人々がムハンマド皇子に否定的です。(唯一、クシュナーが庇っている?)
アフメド・アシリ(Ahmad al-Assiri)総合情報庁副長官、サウード・カハタニ(Saud al-Qahtani)王室顧問はムハンマド皇太子の最側近
アフメド・アシリ(Ahmad al-Assiri)総合情報庁副長官、サウード・カハタニ(Saud al-Qahtani)王室顧問はムハンマド皇太子の最も近しい側近とのことです。
アフメド・アシリ(Ahmad al-Assiri)総合情報庁副長官とは?
この人ですね。
サウジ連合軍によるイエメンへの侵攻の報道官などをしていた方。
世界最悪レベルの人道危機といわれるイエメン内線ですが、あまりにひどすぎて情報が世界に流れません。
ジャーナリストの命が守られないのです。
連合軍に批判的なジャーナリストが、何者かによって命を狙われてしまうのです。
ちなみに、今回のジャマル・カショギ記者も、イエメン内戦へのサウジ関与を痛烈に批判してきた人物の一人でした。
そういう点でいくと、情報部が暴走したという主張にも一応の説得力があるのでしょうか・・・。
サルマン国王は息子ムハンマド皇太子を国王にしたい
とりあえず、サウジ王室(サルマン国王)は必死になってムハンマド皇太子を次期国王にしたいのでしょう。
しかし、サウジは合議制で国王を選ぶ国です。
もともと、ムハンマド皇太子がムハンマド・ビン・ナイーフ前皇太子から皇太子の座を奪ったのだって、合議制によるものです。
そしてその合議制を後ろで支えていたのはアメリカだったはず。
アメリカのバックアップなくしてサウジの王室の後継者は決まりません。
それは、反米だったファイサル国王が暗殺された時から変わりません。
今回の件で「サウジがアメリカに敵対的になる」という人がいますが、それは中東の王室が結局のところ部族社会の延長線上でしかないことを忘れています。
アメリカの後押しがなくなったらどうなってしまうかはサウジ王室が一番よくわかっています。
18年5月27日午後 ムハンマド・ビン・サルマン・サウジ皇太子が銃撃で負傷?イラン報じる
ムハンマド皇太子の代わりを探すアメリカ
報道からすると、トランプ大統領もそろそろムハンマド皇太子に愛想をつかしているようにみえます。
周囲の人間も、ムハンマド皇太子は外せと合唱しています。
いまごろアメリカは、次の皇太子候補を探していることでしょう。。
あとはサルマン国王がそれに納得するかどうかですが、納得しようとしまいと、アメリカは都合が悪くなれば手を下す、そういうもんです。
今の皇太子がこのまま国王になれば、いずれサウジはシリアやイラク、イランの二の舞になりかねません。
アメリカは中東における有力な同盟国のひとつとして、サウジとの縁は切りたくない。
とはいえ、このままではまずい。
非常に苦しい状況に陥っているようにみえます。