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アンドルー・ブランソン牧師が解放へ~正体はやっぱりCIA?トルコリラはどうなる?

トルコに拘束されていたアンドリュー・ブランソン牧師が解放される~ブランソン牧師の正体はやはりCIA工作員?

 

トルコ、米国人牧師を解放 拘束2年、関係悪化の原因に

 

 

ようやくほとぼりが冷めたということでしょう。

トルコに長らく拘束されてきたアンドルー・ブランソン牧師がようやく解放されました。

 

今回の件を巡っては下にも書きましたが、アメリカ政府が解放を強く、強く要求。

今までも多くのアメリカ人が他国に拘束されてきましたが、ここまで強く解放を要求することはなかったのでは?というくらい、トランプ政権はアンドルー・ブランソン牧師の解放を強く要求してきました。

アンドルー・ブランソン牧師はキリスト教福音派の牧師ということで、アメリカの中間選挙を前に福音派の支持を集めたいトランプ政権が選挙を意識して解放を要求しているのだ・・・という論調もありました。

が、そのいっぽうで、

アンドルー・ブランソン牧師の正体はCIA工作員。ブランソン牧師はトルコ国内のクルド勢力を焚き付けて、イラク国内のクルドのエネルギー権益に米政権と近い企業が参画する手助けをしていた・・・

と解説する向きもあり、非常にキナ臭い存在とみられてもきました。

そもそもにおいて、トルコという国の司法判断に、外国のアメリカがいちいちイチャモンつけて介入するということ自体が本来異例です。

アンドリュー・ブランソン牧師の解放交渉は、トルコという国に対する内政干渉と等しい行為でした。

 

また、そもそもにおいて、「裁判所が有罪判決を下してもアンドルー・ブランソン牧師を解放しろ」とアメリカは言ってきましたが、これは「司法に行政が介入しろ」と言っているようなものなんです。

これが三権分立を重んじるべき先進国のすることでしょうか。

このことからも、アメリカがここまで必死になるにはきっとなにかある、という疑念を生み、「アンドルー・ブランソン牧師はCIAのカバー」という疑惑に繋がっていたのだと思います。

現実のところはわかりませんが、そういった疑念を生むくらいには強硬にトランプ大統領、ペンス副大統領は解放圧力を強めてきました。

 

今回、アンドルー・ブランソン牧師がなぜ突然釈放されたのかはわかりませんが、もしかすると、サウジとの関係があるかもしれません。

米英はサウジを庇えるか?ジャマル・カショギ氏殺害事件

在トルコのサウジアラビア領事館でジャマル・カショギ氏が殺害された可能性が示唆されており、この件でトルコとサウジの関係が悪化しています。

なんらかの取引がトルコとアメリカの間で結ばれた可能性もあるのではないか、という気がします。

 

とりあえず、このアンドルー・ブランソン牧師解放によって米国による経済制裁の一部は解除されることが期待されます。

トルコリラにとっては、一時的には安定感がもたらされるかもしれません。(が、なにも状況はかわっていないことには注意が必要です。。。)

 

 

 


 

(以下は2018年8月12日までの内容です)

アンドリュー・ブランソン牧師拘束をめぐりトルコリラ大暴落

米国人牧師アンドルー・ブランソン氏の釈放を求めるトランプ大統領、ツイッターでトルコへの経済制裁強化を表明。トルコリラは2割超の大暴落。

 

トルコの通貨トルコリラが対米ドルで一時2割を超す大暴落となりました。

トルコリラ急落、市民は外貨求め奔走

 

 

これは、トランプ大統領の以下のツイートを受けてのものです

毎度毎度のトランプ砲です。見事な破壊力でスワップ狙いの多くのミセスワタナベを葬り去りました。

 

トルコリラ/米ドル 5分足

 

ぶっちゃけた話、トルコからの鉄鋼やアルミに関税がかかってもトルコ経済にとっては大したことじゃないと思います。

それよりも嫌気されているのは、トルコと米国との関係悪化が一線を越えてきたことに対する恐怖でしょう。

トルコリラ/米ドル 日足

 

とりあえず、これまでの経緯を纏めますと以下のようになります。

 

 

2016年7月15日 フェトフッラー派(ギュレン運動/ギュレン集団)によるクーデター未遂事件が発生

https://www.youtube.com/watch?v=WZs6e4iQGes

 

トルコ軍の一部将校による祖国平和協議会なる組織がレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の排除を狙って軍事クーデターを展開。

エルドアン大統領は滞在先のホテルを爆破されるも、直前に情報を察知して退避していたことから暗殺を回避。

結局、広範な支持を得られなかった反政府勢力・祖国平和協議会は瓦解。クーデターは失敗。

首謀者が誰なのかはいまだに不明ながら(一説によれば元軍法律顧問ムハレム・コセ、もしくはアクン・オズトゥルク前空軍司令官)、この背後にフェトフッラー・ギュレンの支持者が関与していることが濃厚となり、エルドゥアン大統領側によるギュレン支持者への広範囲な粛清が開始。

同時に、アメリカに亡命中のフェトフッラー・ギュレンを黒幕として指摘する声も高まり、トルコ政府はアメリカに対し身柄引き渡し要求を行うも、ギュレン氏は関与を否定し、アメリカ側は身柄引き渡し要求を拒否。

 

またトルコ政府は、PKK(クルド労働者党)支援を含むスパイ行為、およびクーデター未遂事件に関与したテロ容疑で、米国人アンドリュー・ブランソン牧師を逮捕拘束しました。

どうやらエルドアン大統領は、このクーデター未遂の背後にはギュレン氏だけでなく、アメリカ側の工作員の影を感じているようなんですね。

というのも、ご存知の通りクルド人は非常に大量の人口(2500万以上)を抱えていながら国を持っていない民族で、長年、トルコ、イラク、イラン、シリア、ヨルダン、アルメニアなどに散らばって生活してきました。

このクルド人を纏める組織にはいろいろあるわけですが、そのうちの一つであるPKK(クルド労働者党/クルディスタン労働者党)は長年トルコ南東部からイラクにかけて活動し、自分たちの国を作ろうと、トルコやイラクからの分離独立を目標に掲げてきたわけです。(資金源は麻薬だとも言われています 公安調査庁)

2014年以降のISILとクルド諸組織との戦闘、とくにクルド自治政府(KRG)との戦闘に際しては、PKKはKRGを支援したと言われています。

このクルド自治政府KRGも当然、イラクから同地域の独立を目指していまして、しかも同地域には巨大なキルクーク油田があるわけです。そしてこのクルド自治政府KRGのイラクからの独立を支援しているのがユダヤ人国家イスラエルであり、またキルクーク油田で採掘しているのは、ロスチャイルド系のGenel Energyなどなのです。言うまでもありませんが、ロスチャイルドはユダヤ系です。そして、アヘン戦争を焚き付けたジャーディン・マセソン商会の資金源もロスチャイルドでした・・・なにか繋がりませんか。

クルド人独立住民投票:イスラエル首相「支持する」 – 毎日新聞

JPECレポート イラクの石油・エネルギー産業

 

とりあえず、トルコにとってはクルド系っていうのは本当に目障りな存在で、国家に仇なす存在なわけですが、その連中とアンドリュー・ブランソン牧師は関係していたとトルコ政府は主張しています。しかもアンドリュー・ブランソン牧師はフェトフッラー・ギュレン師とも関係があるともトルコ政府は主張しています。

ふつうの牧師が本当にそんな連中と付き合っているのでしょうか?

もし本気でトルコ政府がそういう主張をしているのなら、トルコ政府の考えていることは単純です。

トルコ政府はアンドリュー・ブランソン牧師をCIAのスパイと疑っているのではないか?

・・・と、個人的には感じています。もちろん、根拠は薄いですが、そうでもなければこんなに拗れるはずがないんじゃないかと。

そして、アメリカはかなり強硬にアンドリュー・ブランソン牧師の解放を迫っています・・・トルコ側はギュレン師との交換のためにブランソン牧師を拘束しているだけだ、と言いたいようです。

どちらの言い分が正しいのかよくわかりません。

 

 

とりあえず、トルコ裁判所はアンドリュー・ブランソン牧師の解放は認めませんでした。

トルコ裁判所、米国人牧師の解放認めず 政府は制裁への報復警告 | ロイター

 

これを受け、アメリカはトルコの2閣僚ギュル法相とソイル内相を制裁対象に加えると発表しました。

米、トルコの2閣僚に制裁 米国人牧師の釈放を要求 同盟関係国に異例 …

 

こういう経緯を経て、今に至ります。

こうやってみていくと、なぜNATO加盟国であるトルコが、イランやロシアと組んでシリア情勢に関与して行っているのか見えるような気がします。

もはやエルドゥアンは、アメリカのことを信じられないのだと思います。

トルコはロシアから兵器を購入しはじめています。(超長距離地対空ミサイルシステムS-400トリウームフ)

トルコ向け露ミサイルS-400 生産が開始 露武器輸出社 – Sputnik 日本

米議会、露S400購入でトルコへのF35供給を凍結 – Sputnik 日本

 

こういったトルコ側のイラン、ロシアへのすり寄りに対して、業を煮やしたトランプ大統領が、キレて上記のツイートをしたわけです。

こうやって流れを追って整理してみると、実はトルコのエルドゥアン大統領側にも一理あるとは思えませんか?

少なくとも、アメリカに対して疑念を感じる要素はいくつもあります。

そして、それはたぶんトルコ国民もよくわかっている。だからこそ、エルドアン大統領は先日の大統領選で過半数支持を一発で獲得して大統領続投となったのだと思います。

これだけ経済状況が悪化していてもトルコ国民が西側資本に対して嫌悪感を感じている理由・・・それは、現地の人にしかみえないのかもしれません。とりわけ、イスタンブールみたいな都市部ではなく、アナトリア高原の人々など、もっと違った地域のトルコ人の声を聞かないとわからないと思います。

 

 

 

なお、非常にボラタイルなトルコリラの為替相場ですが、実はこの荒れた相場のさなか株式市場では買い向かっている主体があるそうです。

トルコ株上昇は「あいつ」のおかげか-約111億円買い越す

 

また今回のトルコ通貨安ですが、スペインのBBVA、イタリアのウニクレディト、フランスのBNPパリバの保有債権価値の毀損に繋がるのではないかという恐れが広がっているそうです。

ECB、欧州の銀行のトルコ向け債権に懸念

国際決済銀行(BIS)によると、各国銀行のトルコ向け債権で最大なのはスペインとのことです。

スペイン・・・今年3月末時点で809億ドル(9兆円弱)と全体の36%

フランス・・・351億ドル

イタリア・・・185億ドル

なお、JPMorganによると、海外からトルコが受け入れた直接投資の残高は5月末で1400億ドルとのこと。欧州経済にとってもトルコは非常に重大だったということです。

とりあえず、今回はここまでにします。

次回、この欧州の銀行への波及についても書いていこうと思います。

以上です。

 


追記 2018年8月27日

トルコリラ大暴落~欧州銀行BBVAやウニクレディトなどに波及?

エルドアン大統領はイマーム養成学校出身~そもそも金利に否定的な可能性~

その後、トルコ大統領エルドアンの娘婿であるアルバイラク財務相はが資本統制の選択肢を排除したとのことで、トルコリラは幾分落ち着いた動きとなっています。

なお、トルコで政治工作活動を行っていたのではないか?と疑われているアンドルー・ブランソン牧師ですが、やはりトルコ側としては釈放をする気がないようです。

アメリカは対露制裁措置の一環として、ロシア企業と取引を行ったトルコ国内の銀行への金融制裁を科す方針とも伝わっています。

実際にどこの銀行がターゲットになるかはまだ不明ながら(銀行名も聞いてはいますが、まだ噂レベルなのでここでは書きません)、もし仮にこれが発動されるとなると、このあいだの鉄・アルミへの関税などよりも遥かに実務的な被害の大きなものになる可能性があります。

現在、トルコリラは落ち着いた動きをしていますが、決して油断すべきではないと思います。

なお、トルコ国内での報道やSNSなどをみると、やはり多くのトルコ国民は

「アンドルー・ブランソン牧師=CIAのエージェント」

「アンドルー・ブランソンが福音派の牧師をしているのはスパイを隠すためのカバーに違いない」

みたいな声が多くみられます。

このような状況でエルドアン大統領が解放に応じたならば、彼の政治生命に影響するはずです。

エルドアンとしては、「憎きクルドとアメリカに対抗するために国民みんなで我慢しよう」みたいな流れを作る可能性が高い。

この流れは9月以降も続く可能性が高く、時間が過ぎればすぎるほど、深刻な展開が待っているように思います。

 

とりあえず、秋以降もう一度大きな揺れがやってくることは覚悟しておいた方が良いと思います。