サウジアラムコ施設へのドローン攻撃は中東戦争の引き金になる可能性?

サウジアラムコ施設へのドローン攻撃は中東戦争の引き金になる可能性?

 

サウジアラムコの石油施設に対するドローン攻撃について

2019年9月14日、世界の12%の原油生産量を担うサウジの国営石油会社、サウジアラムコの施設がドローンによる攻撃を受けました。

直後にイエメンの反政府分離派であるフーシ派が

「ドローン10機による攻撃を行った」

と犯行声明を出したそうです。

ただ、実際の被害は10か所以上に及ぶとの報道もあり、本当にフーシ派が行ったのかどうかよくわからない状況となっています。

また、一部報道では

「巡航ミサイルが利用されたのではないか」

「イラクから飛んできたのではないか」

「イラン製の兵器が使われたもよう」

などと様々な憶測まじりの報道が相次いでいます。

 

これらは完全に憶測交じりであり、よくわかりません。

ただ、絶対的に皆が確信しているのは

「イランが背後にいる」

という事実でしょう。

これは、たぶん9割方の関係者の共通認識だと思われます。

 

 

 

サウジアラムコの上場を狙ってドローン攻撃を仕掛けた誰か

サウジアラムコは、目下、上場準備中でした。

サウジアラムコ上場に向けて、無理やり原油相場を引き上げてくる可能性に注意~アブドルアジズ王子のエネルギー相就任を考える

サウジは財政が厳しく、これを賄うために国有株を売却しようとしていました。

そこに水を差したのが、今回のドローン攻撃です。

一部には

「自作自演で原油価格を引き上げようとしている」

などという主張もあるようですが、それはありえないでしょう。

事業リスクを顕在化させるメリットがサウジアラムコには全くありません。

 

たぶん、サウジの当局者は怒り心頭だと思います。

そう、ジャマル・カショギ氏殺害疑惑がかけられているムハンマド・ビン・サルマン皇太子は特に。

 

 

ジャマル・カショギ氏殺害容疑がかけられているムハンマド皇太子がサウジアラムコへの攻撃を黙って赦すか?

ムハンマド皇太子は、サウジアラビアの実質的な行政トップです。

このムハンマド皇太子、めちゃめちゃ恐ろしい容疑がかけられています。

それは、自身に批判的なサウジ人ジャーナリストをミンチ肉にして殺した、というもの。

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とりま、お顔はこんな感じ・・・

 

どうですか?

犯罪者の顔にみえますか?

 

とりあえず、そこらへんの判断はおまかせするとして

このようなムハンマド皇太子が、今回のドローン攻撃を黙って赦しておくようには思えません。

 

 

サウジアラムコへのドローン攻撃は戦争に繋がる可能性アリ?

市場では、今回のサウジアラムコへのドローン攻撃を受けて、非常に冷静な対応が広がっています。

トランプ大統領は来年大統領選ですし、まさかこのタイミングで戦争を始めるはずがない・・・いくらイランが背後にいたとしても、アメリカが有志連合を結成して攻撃するようなことはありえない・・・

というのが、市場参加者の大方の反応のようです。

 

しかし、これは個人的にはかなり甘いのではないかという気がしています。

確かに、戦争リスクは以前として高くはありません。

ただ、大統領選がアメリカであるから戦争がない、という主張は甘すぎるように思います。

 

アメリカが主導しなくても、引きずり込まれる可能性があることには注意が必要です。

つまり、サウジが主導して軍事行動を起こし、アメリカが巻き込まれてしまうリスクです。

個人的には、ムハンマド皇太子の気性を考えると、その可能性は十分にあるのではないか、という気がしています。

 

軍事行動が戦争に発展する可能性ももちろん孕んでおり、今の反応はちょっと油断しすぎな気がしています。

 

 

サウジアラムコへのドローン攻撃の報復としてイランへの軍事行動があった場合、経済面への影響は?

仮にサウジが軍事行動を起こした場合、経済面への影響はどのようなものがあるでしょうか?

 

まず、原油価格は暴騰するはずです。

思惑含めてWTIが1バレル100ドル超えてもおかしくないでしょう。

これはある意味で米国のシェール産業には追い風になります。

 

また、それだけではありません。

サウジの財政が圧迫され、PIFを通じてソフトバンクビジョンファンドに流れ込んでいる資金が減少します。

現在、ソフトバンクビジョンファンドは火の車である可能性が高いと見ています。

薪をくべないと火が消えてしまうかもしれない。

ソフトバンク・ビジョンファンド発の大暴落が発生する可能性に注意が必要

このことが、世界のIT系スタートアップ市場に大きな影響を与えるかもしれません。

もしそうなれば、SaaS銘柄などには引き続き重しとなるでしょう。

 

 

また、戦争リスクとは別ですが、今回の件でドローンによる攻撃が非常に効果的であることがわかりました。

今後はそうした攻撃への対策に多大なコストがかかるのは目に見えています。

原油の生産活動、とくに第三国での開発にはリスクが高まる展開となっており、これが世界の石油生産に与える影響はコスト面から十分に考慮すべきと思われます。(原発も同様にリスク評価が難しくなるでしょう。)

そこらへんはまた別の機会に書きたいと思います。

とりあえず、今回は以上です。