ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表が対中貿易交渉の窓口になることはそんなに嫌気すべきことか?

ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表が対中貿易交渉の窓口になることはそんなに嫌気すべきことか?

 

対中貿易交渉の担当は通商代表部USTRのロバート・ライトハイザー代表に決定

G20後の米中首脳会談で決定した内容に基づき、米国側は中国への25%の追加関税措置を90日間猶予することを発表しました。

同時に中国側はこの期間に、米国側からの輸入拡大策を導入するほか、さまざまな非関税障壁の撤廃、知的財産権の保護強化などを求められています。

詳しくはこちら→2018米中首脳会談のポイント~中国製造2025に関して米側が要求せず?~

今後の貿易戦争の行方を占う90日間の交渉について、アメリカ側の担当がロバート・ライトハイザー米通商代表部USTR代表に決定したとのことです。

これは対中強硬派の最右翼であるピーター・ナヴァロも認めているとのことで、対中軟派、硬派双方からの一任を受けた最終交渉役ということになりそうです。

ピーター・ナヴァロに関しては→米中貿易戦争は持続可能か?~ピーター・ナヴァロ著「米中もし戦わば」

 


ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表が対中交渉役に就くことをマーケットは嫌気

ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表が対中貿易戦争の交渉役に就くことが伝わったことで、市場は敏感に反応。

米中貿易戦争の一旦休戦を好感した前日の上昇を打ち消し、日本株式市場も米国株式市場も3%を超す大幅安となりました。(と市場では解説されています。)

ロバート・ライトハイザーでは中国との貿易戦争は継続する、上手くまとまらない、と市場は判断しているかのように解説されています。

 

 

私見:ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表は実務的。イデオロギー色は薄い。

しかし、私見になりますが、個人的な見立てでいくと、ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表は決して話してわからない人物ではありません。

この人物の過去の経歴をごらんください。

ほぼすべて、しっかりと交渉を米国側が有利なように妥結しています。

貿易戦争がずっと継続して上手くまとまらないような、そこまでの悲観論は行き過ぎと考えます。

イデオロギーかぶれのピーター・ナヴァロが担当にならなかっただけで十分御の字でしょう。

 

 

 

 

ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表の過去の業績

ロバート・ライトハイザー氏は、1983年~1985年までロナルド・レーガン大統領の下で米通商代表次席代表を担当。日米貿易協議で成果をあげています。

また、その後もイギリス、日本、韓国、メキシコに対して米国向けの鉄鋼輸出制限を飲ませることに成功。

2017年にロバートライトハイザー氏は通商代表部(USTR)代表に就任しますが、その後NAFTAを見直してUSMCAの締結にこぎ着けるなど手腕を発揮。

欧州連合EUとの自動車や鉄鋼を巡る交渉でも実利優先の交渉を展開しています。

 

 

ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表によるUSMCA交渉

とくにUSMCA交渉は見事と言える内容です。

マーケットはこの交渉の行方をめぐり悲観論に傾いたことも何度もありましたが、結局最後は満足のいく内容におちついており、カナダも絶対に譲れない乳製品分野でのポイントは死守。

個人的な見立てでいくと、ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表というのは、さすが弁護士出身だけあって守るところと攻めるところのポイントを見極めるのが上手いように思います。

今回もロバート・ライトハイザー氏がそうしたのかはわかりませんが、中国側が頑なに拒否を貫いている中国製造2025に関する部分は米中首脳会談後の発表のなかで触れられていません。

これまでナヴァロなどは強硬にここを叩いていましたが、ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表としては、そこはいくら叩いても無駄だとみたように思います。(個人的にも同感です。中国はそこは譲らないと思います。)

ロバート・ライトハイザー氏は非常に頭のいい人物にみえます。話してわからない人ではなさそうです。

 

 

ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表の対中貿易交渉窓口就任を悲観的に捉えるのは間違いではないか?

私見になりますが、ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表の対中貿易交渉担当就任を悲観的に見るのは間違いだと思います。

(だからといって株価が上がるとみているわけではありません。それとこれとは別です。)

個人的には、今回のロバート・ライトハイザー氏の対中貿易交渉担当就任は、対中強硬派にもう何も言わせないためのトランプ大統領の幕引きのための一手ではないか、とすら感じます。

ぶっちゃけた話、トランプ大統領は自分がまいた火の粉がここまで大きな火になってしまったことに戸惑っているようです。

米国側の経済、株価が強いうちはいいですが、どうやらそろそろ米国にも影響が飛び火してきそうな雰囲気です。

ここら辺の雰囲気を読むのがトランプ大統領はとても上手であり、さすがビジネスマンあがりだけあって引き時、ディールでの解決を望んでいるように見えます。

関連:トランプ大統領は超絶チキンだった件~米国市場に株安波及で習近平と電話会談~

 

 


 

自分はこの米中貿易戦争の本質について、たぶんほとんど誰よりも早くにイデオロギーの対立、安全保障の対立であることを指摘していたはずです。

3月24日 世界は陰謀でまわってるぅ~~米中貿易戦争~~

そしてこの背景にある習近平指導部の体制強化と野望についても書いていました。

2月26日 中国国家主席の任期制限撤廃にみる習近平の野望

さらに、ペンス副大統領の対中冷戦宣言も書きました。

この頃になると、ほぼすべてのメディアが対中貿易戦争は単なる貿易戦争ではなく、イデオロギー、安保の問題だと騒ぐようになったと思います。気づくの遅いですね。

10月5日 東シナ海における米中関係緊迫化のなか、ペンス副大統領が訪日へ

 

 

が、個人的にはもはやその時点の懸念はありません。

もちろん、長期的に見れば米中は覇権争いを繰り返すでしょうが、ことトランプ政権においては、この米中貿易戦争の問題は陰の極みに入ったように思います。

今は、振り子の戻りを期待してもいいタイミングではないか、と感じます。

以上です。